2008年07月25日
愛の奇跡の物語 第6章 前向きに考える
やればできるんだ
何ごとも君しだいだ。
心からできると信じていれば、
何だって実現できるし、
できないと思えば、はじめから無理なのだ。
◆ヘンリー・フォード
ニューヨーク・ジェッツは、有名なプロフットボールチームだが、中でもディフェンスのマーティー・ライオンズ選手をご存知の方は多いと思う。これは、彼の息子のロッキーが5歳の時の話である。
ある夜、母親のケリーの運転するトラックはアラバマ州の田舎道を走っていた。ロッキーは両足を母親の膝に乗せてぐっすり眠っていた。やがて曲がりくねった道にさしかかったので、ケリーは慎重に運転していた。
ところが狭い橋を渡ろうとしたその時、路面の大きなくぼみにハンドルをとられ、トラックは道からはずれてしまった。しかも右側の前輪が、他の車の残した深い轍にはまった。ケリーは何とかしてもとの位置に戻そうと、すばやくギアーをバッグに入れ、アクセルを力いっぱい踏んで、ハンドルを左に切り始めた。でもロッキーが膝の上で寝ていたため、ハンドルが思うように動かせなかった。
一瞬のうちに、トラックは6メートルの崖を転がり落ちていった。その衝撃でロッキーは目をさまし、驚いて言った。「ママ、どうしたの? タイヤがみんな上を向いているよ」
ケリーは顔じゅう血だらけで、何も見えなかった。顔にギアがまともにぶつかり、額から口まで大きく切れ、歯は折れ、頬骨も肩の骨も砕けていた。そして脇の下からは骨が飛び出していた。しかも、つぶれたドアにはさまれて動くこともできなかった。
「ぼくがすぐ出してあげるからねもうちょっとの辛抱だよ」
奇跡的に、ロッキーはどこにも怪我はなかった。母親の体の下からやっとのことではい出し、壊れた窓から外に出るとありったけの力をふりしぼって、母親を引っ張り出そうとした。
でも、幼いロッキーの力では母親の身体を動かすことはできなかった。
「ママは眠いの。寝かせてちょうだい」。ケリーの意識は薄れかかっていた。
「ママ、寝ちゃダメだよ!」
ロッキーは必死だった。今度はトラックの中から母親を押すと、やっと外に出すことができた。何とかして崖の上の車道に出られれば、走っている車を止めて助けてもらえるとロッキーは考えた。
だが、暗闇の中ではこんな小さな子どもの姿など見えないに違いない。ケリーはロッキーを1人で行かせることはできなかった。
こうして2人の辛くきびしい崖登りが始まった。体重が20キロにも満たない小さな男の子が、50キロ近くある母親を押し上げながら登っていく。一押しごとに2センチずつ動かすのがやっとだった。ケリーは激痛のあまり、何度登るのをあきらめようとしたことだろう。
ロッキーは母親を励ました。
「ママ、『ちいさな機関車ティリー』のお話を思い出してよ。あんなに小さかったのに、いっしょうけんめいお山を登ったじゃないの」。そして、絵本の主人公がけわしい山をへこたれずに登りながらつぶやくことばを、くり返し母親に言って聞かせた。
「シュッ、シュッ、ゴトゴト! できるさ。やればできるんだ」
2人はとうとう崖を登りきった。車道に出ると、母親の血だらけになった顔が外灯に照らし出された。ロッキーは大声で泣いた。やがて2人は、前方からやって来たトラックの運転手に助けられ、病院へと運ばれた。ケリーは8時間がかりの大手術を受け、344針も縫った。
しかし幸いなことに、今ではその傷跡はほとんど消えている。ロッキーのこの勇敢な行動は、ニュースに取り上げられ、すっかり有名になった。
でもこの無邪気なロッキーには、まわりがなぜそんなに大騒ぎするのかわからなかった。彼はこう言うだけだった。
「はじめっから、あんなことがおきなければよかったんだ。みんな、ぼくがえらいって言うけれど、もしそこにいたら、誰だって同じことをしたと思うよ」
◆ミシェール・ボーバ
こころのチキンスープ―愛の奇跡の物語
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お子さんをもつ親にぜひ読んでもらいたい良書です。
感想などで変な先入観を持ってもらいたくなかったので、各章一番グッときたお話を引用という形で紹介していきたいと思います。
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