2008年07月24日
愛の奇跡の物語 第5章 夢を生きる
トミーのバンパーステッカー
ある日私は、カリフォルニア州ハンチントンビーチの協会でスピーチをした。スピーチが終わると、1人の少年がわたしのところへやってきた。
小さな手を差し出して握手すると、私が話した子ども銀行について質問してきた。
「ぼくの名前はトミー・ティーグで、六さいです。あなたの言っていた子どもぎんこうから、ぼくもお金をかりることができますか?」
「トミー、さっきスピーチで話したように、子ども銀行は子どもにお金を貸すためにあるんだよ。今までにお金を借りていった子どもたちは、みんな立派に返してくれている。ところで何のためにお金がいるんだい?」
「4さいのころから、ぼくのちからで世界をへいわにしたいって思ってます。だから車のバンパーにはる、『へいわを! 子どものために! トミーからのおねがい』って書いたステッカーを作りたいんです」
「それはいい考えだね。もちろん力になるよ」
マーク・ハンセン子どもエンタープライズ基金は、1000枚のステッカーを印刷するために必要だという454ドルの小切手を切った。
成り行きを見守っていたトミーの父親が、こっそり尋ねた。「もしトミーが、お借りしたお金をきちんと返さなかったらどうします? 自転車を差し押さえますか?」
私はすかさず父親に言った。「そんなことはありえません。子どもは本来正直で、道徳心に富み、常識をわきまえているものです。そうでない子どもがいるとしたら、大人の責任です。あなたのお子さんのことも信頼していますよ」
子どもは9歳になったら、正直で道徳心に富み、しかも常識をわきまえた人のもとで働かせてみるべきだと私は考える。なぜなら、そうした経験を通じて、大切なことを身につけることができるからだ。
私は販売促進のための秘訣を吹き込んだテープ全巻をトミーにプレゼントした。彼は何と21回も聞いてその内容をすっかり吸収したという。
その秘訣の第一歩とは次の通りだ。「まず、商品を買ってくれそうな人たちを可能性の高い順にリストアップし、第一番目の人から販売を試みること」
バンパーステッカーができあがると、トミーはさっそく父親を説得し、まずはレーガン元大統領の家に連れていってもらった。まず守衛に、一生けんめい平和のためのステッカーを売り込んだ守衛は思わずポケットから1ドル50セントを出し、1枚買い、こう言った。「ちょっとここで待っていなさい。今、元大統領をお連れするからね」
後日、私はトミーに聞いたものだ。「どうして元大統領に売ろうなんて、スゴイことを考えついたんだい?」
「だって、マークはテープの中で言っていたよ。買ってくれるかどうか、だれにでも聞けってね」
「そうだったね。確かに僕はそう言った。聞くだけヤボだったね」
トミーはさらに当時ソ連の大統領だったミハエル・ゴルバチョフ氏にも、1ドル50セントの請求書を添えてステッカーを送った。
しばらくすると、「平和のために頑張れトミー」と大統領自らの言葉とサインが書き込まれた写真が届いた。小切手も同封されていた。私は有名人の自筆署名をコレクションしているので、さっそくトミーと交渉を始めた。「どうだい、その写真を僕に売らないかい? 500ドル払うよ」
だが、トミーの答えは「ううん、売らない」だった。
「そうかい残念だな。ところでトミーは、僕がいくつもの会社を持っているのを知っているかい? 君が大きくなったら雇いたいなあ」
「悪いけど、それはダメ。だって大きくなったら、ぼくがあなたを雇いたいと思ってるんだから」
ある日、ローカル新聞「オレンジ郡レジスター」の日曜版で、トミーと、子ども銀行と、私のことが紹介された。
記者のマーティー・ショーは、6時間もかけてトミーに素晴らしいインタビューを行なった。世界を平和にするためにどんなことができると思うかという質問に、トミーは答えて言った。「ぼくは、まだ小さいから、今は無理だと思っているけれど…。だって8さいか9さいにならないと、世界中でおこっている戦争をなくさせるのはむりでしょう!?」
さらに、インタビューは続いた。「トミー君、では君の尊敬する人物は誰だい?」「まずぼくのパパ、それからジョージ・バーンズ(99歳になる有名コメディアン)、ウォーリー・ジョイナー(有名な野球選手)、そしてマーク・ハンセンだよ」。尊敬する人物に私を選ぶとは、実にいいセンスをしているものだ。
この記事が出てから3日たつと、グリーティング・カードで有名なホールマーク社から私に電話がかかってきた。あるフランチャイズ店のオーナーがその記事を見て、本社に連絡したのだという。ホールマーク社ではサンフランシスコでコンベンションを開くので、トミーに講演依頼したいとのことだった。トミーが立てた9つの目標が、社員の参考になるだろうと考えたのだ。
ここでその目標を皆さんにもご紹介しよう。
1.ステッカーを作る費用を調べる。(野球選手カードを担保にお金を借りる)
2.ステッカーを印刷する
3.資金借入れの計画を練る。
4.どうやって多くの人に知ってもらおうか考える
5.いろいろな分野における有力者の住所を集める
6.各国の大統領および有力者に、手紙とステッカーを無料で送る
7.平和についてみんなに話す
8.新聞社に話を持ち込む
9.学校に話す
この話は準備期間が短すぎたため、残念ながら実現できなかったが、ホールマーク社、トミー、私の三社間で行われた交渉は愉快かつ熱のこもったものだった。
それからしばらくたったある日のこと、テレビのトークショーで有名なジョーン・リバーズから、トミーに出演依頼の電話がかかってきた。やはり誰かが新聞の切り抜きを彼女に送っていたのだ。
「トミー、ジョーン・リバースよ。私のテレビショーに出る気はない? 何百人もの人が見ている有名なショーよ」
「すごい!」と言ったものの、まだ子どものトミーは彼女がテレビ界の大物だとは知らなかった。
「出演料として300ドル払うわ」とジョーンが続けた。
「すごい!」ともう一度トミーは言ったが、そこで私がプレゼントしたテープに吹き込まれた「自分を高く売る方法」の部分を思い出した。何回も繰り返して聞いたので、頭にこびりついていた。トミーはさっそくジョーンに言った。
「ジョーンさん。僕はまだ8歳です。ニューヨークのスタジオまで、1人では行けません。ママも一緒に行っていいですか?」
「もちろんよ。お母さんも連れてらっしゃい」
「もう1つお願いがあります。さっきテレビで『金持ちと有名人のライフスタイル』を見ていたら、有名人はニューヨークではトランプ・プラザに泊まるんだって、司会のロビン・リーチが言ってました。ぼくたちもそのホテルに泊まれたらいいなって、思ったんです」
「いいわよ」
「それから、ニューヨークでは絶対、エンパイア・ステートビルディングと自由の女神をみなくっちゃいけないそうです」
「あなたたちが見られるように、取り計らっておきましょう」
さらにトミーの交渉は続いた。「ぼくのママは運転できないんです。ジョーンさんはリムジンを持っていますか?」
「持っているわよ。迎えに行かせましょう」
こうしてトミーは予定どおりジョーン・リバーズのショーに出演し、ジョーンとショーの関係者だけでなく、会場の人たち、この生番組を見ている全国の視聴者をとりこにした。
トミーはハンサムでチャーミングな、小さな起業家そのものだった。彼は、子どもの未来のために世界を平和にする運動として、バンパーステッカーを売っていることを話し、協力を呼びかけた。その熱心な話しぶりにひきこまれ、会場の人々は、知らず知らずのうちに手を財布に伸ばしていた。
ショーも終わりに近づいたところで、ジョーン・リバーズはトミーに顔を寄せて尋ねた。
「トミー、あなたのバンパーステッカーだけど、本当に世界の平和に役立つと思う?」
トミーは愛らしい笑みを浮かべると、力をこめてこう言った。
「ぼくがステッカーを作り始めて、2年になります。ベルリンの壁はもうないでしょう!? ぼくはうまくいっていると思いますが、ジョーンさんはどう思いますか?」
◆マーク・V・ハンセン
こころのチキンスープ―愛の奇跡の物語
教育現場に積極的に取り入れてもらいたい良書です。
お子さんをもつ親にぜひ読んでもらいたい良書です。
感想などで変な先入観を持ってもらいたくなかったので、各章一番グッときたお話を引用という形で紹介していきたいと思います。
これを読んであなたは何を感じましたか?
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