2008年07月23日
愛の奇跡の物語 第4章 生きることは学ぶこと
こころのチキンスープ―愛の奇跡の物語
学習とは、生まれた時からすでに知っていることを見つけることである。
実践とは、生まれた時からすでに知っていることを行動に表わすことである。
教育とは、生まれた時からすでに知っていることを自分以外の者に思い出させることである。
我々はみな学習者であり、実践者であり、教育者である。
◆リチャード・バック
こころのチキンスープ―愛の奇跡の物語
追憶
何年も前のこと、私はミネソタ州モーリス市にある私立セントメリー学園で、34人の小学3年生を教えていた。子どもたちはみな可愛かったが、中でもマーク・エクランドは特に記憶に焼きついている。ハンサムな上に、いつも楽しくてしかたないといった様子をしていて、いたずらをしたときでさえ思わず楽しくなったものだ。
ただ、マークはひどくおしゃべりで、「授業中に勝手にしゃべってはいけません」と、1日に何回も注意しなくてはならなかった。
でも私が驚いたのは、叱られたときのマークの態度だった。いつもまじめな顔になってこう言うのだった。「先生、注意してくれてありがとうございます」。初めてそう言われたときは、どう受けとめたらいいものか戸惑ったが、いつも言われているうちに慣れてしまった。
ある日、午前中の授業で、マークのおしゃべりがあまりひどいので、私はついに我慢できなくなった。マークをにらむと、教師があまり言うべきことではないことを言ってしまった。「マーク!あと一言でも何か言ったら、その忙しい口にテープを貼ってしまいますよ!」
すると10秒もたたないうちに、チャックという子が言いつけた。「先生、マークがまたおしゃべりしました!」マークの見張りを頼んだ覚えはないのに…。でも、もういちどしゃべったら罰を与えるとみんなの前で言ってしまったのだから、そうするほかなかった。
あの朝のことは今でも忘れない、私は机の引き出しからもったいぶって粘着テープを取り出し、一言も言わずに歩いて行くと、マークの口にテープでバツ印をつけた。そして、教室の前の自分の席まで戻った。
そこでどんな様子かと目をやると、マークは私にウィンクをしてくるではないか!思わず笑い出してしまった。クラス中がワイワイと大騒ぎする中を、私は彼の机まで戻り、テープをはがし、肩をすくめた。すると、開口一番マークは言ったのだった。「先生、注意してくれてありがとうございました」
その年の終わりに、私は数学教師として同じ学校の中学部に移った。それから何年貸して、私の数学のクラスに再びマークがいるのを見つけた。彼はますますハンサムになり、あの誠実な態度は変わらないままだった。中学3年ともなると、さすがのマークも授業をしっかり聞き始めた。もう昔のようなおしゃべりは姿を消していた。
ある金曜日、マークのクラスで数学を教えていると何かがいつもと違っているのに気づいた。その週に入ってから新しい学習に一生懸命とり組んできたのだが、生徒たちはこれに手こずり、だんだんイライラしてきたのだろう。お互いにとげとげしくなっているようすだった。私はこのまま授業を続けるのをやめ、ここで一息いれることにした。
そこで、2枚の紙に自分以外のクラスメート全員の名前を、少し間をおいて書くよう指示した。そして、一人一人の友達について、その人の持っているいいところを考えて書き込んでいくように言った。結局、授業の残りの時間はこの作業で終わってしまった。
でも、教室を出るとき、チャックは私ににっこりと笑いかけ、マークは「先生、ありがとうございました。よい週末を」と言って、できあがったリストを渡していった。
翌日の土曜日、私は一人一人の子どもについて他のクラスメートが書いたことを、別の紙に書き移していった。
月曜日になってそのリストをそれぞれの生徒達に渡した。中には、2ページにわたっているものもある。もらったリストを読み始めると、子どもたちの顔に笑みが広がっていった。そして、あちこちからこんな声があがった。
「ほんと!? こんなこと書いてもらえるなんて信じられないわ!」
「ヘェーッ、僕のあんなとこがいいって言ってくれるのか!」
「僕って、結構好かれてたんだな!」
まもなく、生徒達はリストのことを話題にしなくなった。生徒達同士で放課後話し合ったのだろうか? それとも両親に話したのだろうか?
でも、そんなことはどうでもいいことだった。みんなが再び元気になり、心の平成を取り戻せたのだから。
生徒達は私の元から飛び立っていった。それから何年か経った。
ある日、休暇から戻ると、両親がいつものように空港に迎えに来てくれていた。車の中で、母がいつものように聞いてきた。旅行先での天気はどうだったか、どんな経験をしてきたか、とかいった質問だ。
でも、私は両親の態度に何か不自然なものを感じた。
しばらくすると、母が促すように父を横目でちらっと見て言った。
「ほら、父さん。あのこと…」父はゴホンとせき払いをした。
「マーク・エクランドの家族から、昨日の夜、電話があったよ」
「本当? ずいぶん久しぶりね。最後に手紙をもらってから、もう何年にもなるわね。マークは元気にしてた?」
父は静かに言った。「マークはね、ベトナムで戦死したそうだ。葬式は明日だそうだよ…。ご両親がお前にも出席して欲しいって言ってたよ」
それを聞いた瞬間、時間が止まったように感じた。494号線のどこを車で走っていたかさえ、今でもはっきり覚えている。
翌日の葬儀で初めて見る軍の棺には、あのマークが横たわっていた。じっと目を閉じた彼の顔はとてもハンサムで凛々しかった。その彼に向かって、私は心の中で叫んでいた。
「マーク、先生に何か言ってちょうだい。世界中の粘着テープを用意して、あなたが話してくれるのを待っているから。お願い、昔みたいにおしゃべりをしてちょうだい!」
教会はマークの友達でいっぱいだった。チャックの妹が「戦死した兵士を天国へ送る歌」を歌った。よりによって、この葬式の日に、どうして雨が降らなければならないのだろう?
墓地では、さらにその思いが強まった。牧師のお祈りに続き、軍のしきたりにそって弔いのラッパの音が響き渡った。1人ずつ棺に聖水を振りかけてお別れをした。最後に私の番がやってきた。そこへ、棺の付添い人として立っていた兵士が近寄って来た。
「失礼ですが、マークの数学の先生ですか?」
私は棺を見つめたままうなずいた。
「マークから先生のことはよく聞いています」とだけ言うと、その兵隊は敬礼をして去っていった。
葬儀が終わると、クラスメートたちは会食のためにチャックの家に向かった。そこでは、マークの両親が、私を待っていた。
「先生にぜひお見せしたいものがあります」と、ポケットから財布を出しながら父親が話しかけてきた。「マークが死んだ時、身につけていたものです。先生なら、これが何かおわかりになると思います」。そして財布の中から2つ折になった紙を、破れないように丁寧に取り出した。
私には、それが何かすぐにわかった。昔、クラスメート全員がマークのいいところを書き、さらに私が書き写したあのリストだった。何度も何度もマークが手にとって読んだのだろう。破れそうになったところを何か所もテープでつなぎ合わせてあった。
マークの母親は、「先生、ありがとうございます。ご覧の通り、マークはこれを宝物にしていたんです」と話した。
教え子たちがマークの両親と私のまわりに集まってきた。チャックは、はずかしそうにほほ笑み、こう言った。
「先生。僕、例のリストをまだ大事にとっているんですよ。机の一番上の引き出しに入れています」
ジョンの妻もその後をついで言った。「私たちも結婚記念アルバムに入れています」
「私もやっぱり持ってますよ、先生」とマリリンが続いた。
やがて、ビッキーがハンドバッグから財布を取り出すと、中からすっかり古びて擦り切れた紙が現われた。それを見せながら、彼女は目を大きく見開きまばたきもしないで言った。
「私も肌身離さず持ち歩いています。あのリストは、みんなにとってそれだけ大事なものだったんです」
その言葉を聞いたときだった。私はついにこらえきれなくなり、椅子に座り込んで泣き始めた。死んだマークと、そのマークに二度と会うことのない友人たちのために、涙はとめどなく流れ続けた。
◆ヘレン・P・ムロスラ
こころのチキンスープ―愛の奇跡の物語
教育現場に積極的に取り入れてもらいたい良書です。
お子さんをもつ親にぜひ読んでもらいたい良書です。
感想などで変な先入観を持ってもらいたくなかったので、各章一番グッときたお話を引用という形で紹介していきたいと思います。
これを読んであなたは何を感じましたか?
他にも素敵なお話がいっぱいあります。
ぜひ購入してみてはいかがでしょうか?
こころのチキンスープ―愛の奇跡の物語
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